第1回 バイオマス・コラム in 宮崎

2018/06/13

再生可能エネルギーには、より効率的な発電事業を行っていくことに加え、地域資源と結びつくことで地域活性化に貢献していくことが期待されています。
本コラムでは、バイオマス女子こと東邦大・竹内が訪問した国内外のバイオマス発電所を事例に、各発電所がどのような地域貢献を行っているのかご紹介していきたいと思います。

 

筆者Profile
竹内 彩乃(たけうち あやの)
東京工業大学大学院総合理工学研究科を修了後、2012年~2015年までドイツの環境コンサル、再エネのエンジニアリング会社で日本の再生可能エネルギー事業、主にバイオマス発電事業と洋上風力発電事業に携わった。日独を行き来する中で、自身の勉強のために参加したNPO法人農都会議バイオマスWGで協会の森副代表理事に出会い、バイオマスと地域活性化の考え方について学ぶ。
2016年より東邦大学理学部生命圏環境科学科で教育に携わることになった事をきっかけにして、再エネ人材の育成のため、協会運営にも関わっている。

 

第1回 バイオマス・コラム in 宮崎

 森林資源豊かな宮崎県で2015年より稼働する宮崎森林発電所を訪ねてまいりました。自社に林業部門をつくり、いち早くオーストリアのタワーヤーダーを取り入れた山下社長。地元密着型の企業ならではの発想で地域課題の解決に取り組み、事業を通して地域活性化を実現していらっしゃいました。

宮崎県庁
宮崎県庁

山下社長がバイオマス発電事業に取り組んだきっかけ

宮崎森林発電所 「木質バイオマス発電」と「林業」の活性化を同時に行えば、地域でお金が循環すると考えた山下社長は、これまで林業を生業とする人がいなかった川南町において、木質バイオマス発電所の計画と同時に、林地残材を利用するために新しく林業部門を作りました。20人のチームで林地残材を集めているそうですが、これまで林業に携わったことのある経験者はそのうち約3割。
 当初は異物が混入していたり効率が悪く、木質チップを購入した方が燃料費が安いぐらいだったようです。しかし、発電所と集材チームがコミュニケーションを取りながら、細かい工夫が積み重ねられ、現在では木質チップを購入するよりも安価に燃料を賄うことができているとのことでした。
 

これまでの経験が活かされた木質バイオマス発電所

 川南町には、宮崎森林発電所の隣にもう一つの発電所、鶏糞発電所があります。鶏糞の処理が問題となっていた宮崎県で「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が成立したことをきっかけに、山下社長が計画した発電所です。焼却すると鶏糞が10分の1の体積になり、焼却灰は肥料として販売できるということでしたが、固定価格買取制度のなかった当時は、経営的にとても難しいものだったようでした。また鶏糞の悪臭が問題となっていました。
 固定価格買取制度が開始されてからは、ブロイラー業者から鶏糞を買い取ることができるようになり、地域でお金が循環するようになったそうです。また、木質バイオマス発電所が鶏糞の臭気を吸い込むことができるようになり、悪臭問題が解決しました。鶏糞発電所については、小学校の理科の副読本にも掲載され、毎年見学やインターンシップの受け入れを行っているそうです。

宮崎森林発電所
宮崎森林発電所

効率を最大限追求、FITに安心しない

 山下社長が強調していたことは、効率は稼働後も追求できる、ということでした。私がドイツの再エネ企業で働いていた時に、「地域に合った発電所を作ることで発電効率を高める」ことに多くの時間を割いていた社長の姿を思い出しました。発電所の立地エリアに土地勘と技術を持った専門家がいることが重要です。ただ、地元の行政としては熱の利用も考えてほしい、という思いもあるようです。効率を追求しながら、熱の利用も考えていく。これを実現するためには、一つの事業で成り立たせようとするのではなく、地域全体で最適な事業を考えていく必要があるのではないかと感じました。

今後の展望

 現在は伐りやすい場所から伐っているようですが、今後は伐りだしづらい場所からも材を集める必要が出てきて、材のコストが上がる可能性があります。宮崎森林発電所では、林地残材が集まらなくなった場合のリスク対策として山を購入しているようです。昨年から植林のための苗木の助成を行ったり(7500円/ha)、企業の森をつくったりしています。人づくりから山づくりまでを手掛ける発電所として、今後の発展を期待しております。

宮崎森林発電所の水谷さんと
宮崎森林発電所の水谷さんと

宮崎発電所の概要
 住所  〒889-1301宮崎県児湯郡川南町大字川南4591-5
 建設開始 2014年5月
 稼働開始 2015年4月
 発電規模 5.75MW, CFB
 燃料:国内材、年間約7万トン
 総事業費: 35億円
宮崎森林発電所の地域貢献メニュー
 ・地域の雇用創出
 ・森林への助成
 ・防犯灯の設置
 ・教育やインターンシップに発電所を活用

 今回は、宮崎森林発電所の山下様、永友様、水谷様、宮崎県庁の永田様、世見様、川南町の押川様、フォレストエナジーの沼様にお話を伺いました。お忙しいところ、貴重なお話をしていただき、ありがとうございました。

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 第1回 バイオマス・コラム in 宮崎