当協会のスタンス
- バイオマスのエネルギー利用に関する当協会のスタンス
2024/09/13
バイオマス発電は、再生可能エネルギーの中でも、天候に左右されず、安定した発電量を確保できるベースロード電源であり、電力需要に応じて発電量を調整することが可能です。
植物由来のバイオマス燃料は、成長段階で光合成により二酸化炭素(CO2)を吸収するため、燃焼させてCO2を排出しても、吸収と排出によるCO2のプラスマイナスはゼロであり、大気中のCO2を増やしません。このため、バイオマス燃料は「カーボンニュートラル」であるとみなすことができます。
このようなバイオマス発電のさまざまな特長や、その意義、サステナビリティ、地域貢献の取り組みなどは当協会ホームページの各ページにおいて記載しております。(当協会HP「バイオマス発電の意義」等をご参照ください。)
このように有用なバイオマスのエネルギー利用ですが、一部のケースについて問題点が指摘されております。実際に起こっている・起こりうる問題や指摘があることも事実です。代表的な指摘を紹介いたしますとともに、当協会の考え方も合わせて述べます。
まず、バイオマス燃料が生産される際、原料となる木材や農作物を確保するにあたって、とくに海外では、森林破壊につながっているという指摘があります。この指摘につきましては、持続可能性に関する認証(※)を始めとした確認方法により、環境に悪影響を与えるようなバイオマスの調達を避けることができると考えられます。(※)森林認証(FSC、PEFC)、パーム油のための認証(RSPO)、木質バイオマス燃料のための認証(SBP、GGL)、広くバイオマス全般を対象とする認証(GGL、ISCC)など、様々な持続可能性認証があります。
また、バイオマス燃料を生産するための施設やエネルギー利用するための施設で、粉塵の飛散による健康被害や、大気汚染などが問題視されている例もあります。近隣住民や労働者の健康や安全への配慮も、持続可能性認証を取得するための要件となっています。このように、認証等を活用することにより環境にも社会にも配慮する適切なバイオマス燃料の利用に取り組んでおります。
次に、バイオマス燃料はカーボンニュートラルな燃料ですが、これを生産・輸送する際に化石燃料を用いることがあるため、CO2などの温室効果ガス(GHG)を排出しているという指摘もあります。
バイオマス燃料の原料調達から利用されるまでの一連の流れをライフサイクルといいます。ライフサイクル全体を通じてGHGを排出していることは事実ですが、それはどのエネルギー源でも同じです。また、その量が化石燃料で発電する場合よりも明らかに小さければ、気候変動対策として効果があると言えます。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)などでは、ライフサイクルGHG排出量が小さいバイオマス燃料のみが使われるよう、排出量基準を定めています。基準を満たすバイオマス燃料を使用することで、真に気候変動対策に貢献するバイオマスエネルギー利用を進めます。
さらにバイオマス燃料によるGHG排出削減効果については、他にも様々な指摘があります。
代表的な指摘として、石炭火力発電とバイオマス発電を比較して、発電量あたりのGHG排出量はバイオマス燃料の方が大きいという意見があります。
バイオマス燃料が水分を多く含んでいることなどが理由で、こうした意見につながる数値データも確かにありますが、化石燃料とバイオマス燃料は燃料が作られるまでに要する期間の違いを踏まえて捉えるべきで、単に数値を比較することは適切でないと考えています。化石燃料を利用すると何万年も地中に閉じ込められていた炭素が一気に放出され、大気中の炭素が増加します。一方で、バイオマス燃料の燃焼は生物起源の炭素が放出されますが、森林や植物の再生により再び炭素は蓄積され、数年から数十年のスパンで安定させることができます。
更なる指摘として、森林が再生に数年から数十年の期間を要することをもって、炭素蓄積の回収までに長い時間がかかりそれまでの間「炭素負債」を抱えることになるという意見があります。
一般的に木材は、高品質な部位は長年その形状を維持する建築材料として用いられ、低質な材や製材端材が燃料に用いられるため、全ての炭素が一度に大気放出され負債となるわけではありません。また、森林は、成長力(すなわちCO2吸収力)を維持するために、適度に間伐等の管理を行い健全な状態を保つことが重要です。伐採した木材の用途の1つとしてエネルギー利用という選択肢があることは、森林の伐採と再生の循環を促すことにつながっています。
以上、主に寄せられる指摘について記載させていただきましたが、このような指摘を受け止めた上で、当協会は今後もバイオマス発電の有用性を活かし、地球の温暖化防止、地域経済の発展へ貢献できるよう、会員企業の事業推進をサポートしてまいります。