2019/11/14
一般社団法人バイオマス発電事業者協会は、9月30日(月)、定期講演会「自治体による再生エネルギー拡大の取り組みとバイオマス発電」を開催しました。
会場の東京都港区の機械振興会館B2Fホールに、会員企業をはじめ発電事業者、燃料メーカー、商社など約100名の参加者が集まりました。
協会の山本毅嗣代表理事のご挨拶に続き、公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES) 特別研究顧問および一般社団法人 イクレイ日本理事長の浜中 裕徳様、 北海道石狩市 企画経済部 企業連携推進課の堂屋敷 誠様のご両名より、「自治体による再生エネルギー拡大の取り組みとバイオマス発電」をテーマに講演が行われました。
1.浜中 裕徳様
「脱炭素社会・経済に向けた再生可能エネルギーの拡大普及と自治体の役割バイオマス発電への期待」
自身はエネルギー分野の専門家ではないが、現在世界に1,750以上の自治体が環境に取り組むためのネットワーク組織であるイクレイ日本の代表をしており、2年前までは地球環境環境戦略研究機関の理事長を務めていた。それ以前は環境省において15年以上地球環境の問題に携わってきた地球温暖化問題の専門家である。
昨今、気候変動は非常に深刻な問題と認識されており、190の国や地域がそれぞれの目標を掲げ取り組んでいる。主な取り組みである『脱炭素化』を経済・社会に落とし込むためには、国だけでなく自治体や企業の積極的な参加が必要であると考えている。
2018年以降でも地球温暖化に伴う異常気象、大雨、干ばつが多く発生している。例として北極圏の気温上昇、海氷の融解、2014〜2016年の3年連続での世界平均気温最高値更新、2018年の海水温最高値更新等があり、これらは大気中へのCO2排出量増によるCO2濃度の上昇が原因である。
世界経済フォーラムでも環境が2006年以来リスクのトップに掲げられており、これを受け国連機構変動枠組条約に加盟する国が2015年にパリ協定が採択されるにいたった。長期目標として気温上昇を2度以下に、さらなる努力目標として1.5度以下に抑制することが設定され、今世紀後半には地球温暖化ガス排出を正味ゼロにすることを目指している。ただし、各国5年ごとに目標設定、評価というサイクルで取り組んではいるものの、現状のままでは2030〜2052年までの間に1.5度上昇してしまう勢いである。2度と1.5度では地球環境への影響にかなりの差があるため、できれば1.5度以内に抑制したいが現状の各国の目標が達成できても目標とは大きな隔たりがある状況である。日本政府もエネルギーは再生可能エネルギーに、地域・くらしに関しては2050年までにカーボン・ニュートラルにという戦略を立て取り組んでいる。
一方、世界では2050年までの地球温暖化ガス排出を正味ゼロを目指す自治体、企業が増えて来ており、日本でもSBTiやRE100に参加する企業が増加している。また、地域における再生可能エネルギー拡大は地域社会において多用なメリットがあるという点から、横浜市、みやま市、東松島市当も積極的に取り組みを始めている。
再正可能エネルギー拡大のための今後の取り組みは、『市民主体』、『企業との連携』、『市民・企業の活力を引き出す環境整備』といった課題を『自治体同士の連携・協力→ネットワーク形成』と『国の支援』で乗り越えながら進むべきであると考える。
2.堂屋敷 誠様
「石狩市が取り組む再生可能エネルギー100%プロジェクトとバイオマス発電への期待バイオマス発電への期待」
石狩市は札幌市に隣接し車で約30分の場所に位置している。市内でも人口が集中する石狩エリアの新港地域に300ha、約360企業、約20,000人が働く工業団地があり、これが石狩市発展の原動力となっている。電力も非常に多く使用するこの地域に再生可能エネルギーを集中させることにより、再エネを石狩市の個性として発展させたいと考えている。
現在のところ約238MWの再エネが発電されており、これを地域の資源ととらえてSDGsやESG投資に注目する企業の誘致を進めたいと考えているが、この中心となるのがデータセンターである。昨今のデータセンターは情報処理量の増加に伴い、その増加量以上の電力需要の増加が見込まれているため、再エネが豊富に供給できる新港地域は好立地であると評価をされている。
一方、これまで進められて来た再エネ発電設備は賦存地域と需要地にギャップがあった。これを解決するため系統の拡大を要請しているところではあるが、作った電気を地域で使用しずらいという懸念もある。先日の地震の際のブラックアウトの要因でもあった電力の一極集中を解消し、港湾機能を停止させることなく物流の混乱を招かないためにも、港湾エリアのマイクログリッド化に取り組んでいるところである。莫大な費用がかかる系統整備ではなく、最小限の費用で済む再エネの地産・地消の体制の構築は地方活性化の切り札の1つとなり得ると思われる。
このような背景より石狩市は京セラコミュニケーションシステム、北海道電力、北海道ガスとともに『再エネ活用マスタープラン』を策定した。これは再エネ100%エリアを定め、太陽光発電、風力発電を受給制御AIや蓄電池を活用しながら自営線でデータセンターまでつなぐというものであったが、さらに出力が安定しない太陽光、風力の能力を補うため、これにバイオマス発電を追加することによりより調整が容易となり、蓄電池のコストも抑えることが可能となった。将来は大規模洋上風力発電を追加することにより、供給電力の拡大が見込まれ、エリア内のさらなる電力需要の拡大への対応や、エリア外の施設への電力提供も視野に入れている。
再エネ100%エリアの狙いはCO2削減目標の達成と域内で資金が循環することによる地域活性化である。北海道には全国の森林の約4分の1があり、バイオマス発電によりここから発生する地域材を活用することで林地の適性な管理も可能となる上、林業振興で地域に資金が循環することによって地域の活性化も図れると考えている。そのため、現在広域の森林組合の連携を進め、未利用材の安定供給体制を構築しているところである。
石狩市の考える将来像は再エネを活用したモビリティの脱炭素化である。また再エネ利用の水素活用も考えており、2030年の冬季五輪に立候補している札幌市と連携した水素活用も計画している。さらにモビリティと情報産業の連携強化という点も視野に入れている。
石狩市が目指す地域像は①地域の脱炭素化/エネルギー強靭化、②再エネに関連する新たな産業を生み・育てることによる新たな産業の創出、③市民が再エネ活用によるメリットを享受できる仕組みの構築であると考え、実現のため引き続き努力して行く。
以上2名の方のご講演の後、会場を移して懇親会が行われ、講演会、懇親会とも盛況裡に終了いたしました。
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